ソーシャルゲームの予算規模を軽くまとめる

ソーシャルゲームの予算規模を軽くまとめる

(2012年1月書き直し。文章が長いという意見が多く見られたので箇条書きでまとめ直した)

(2012年9月追記。コンプガチャスマホや海外動向など最新事情をフォロー)

続き:http://anond.hatelabo.jp/20121214003650
規模別まとめ

小規模
初期開発費:100万円〜400万円
スタッフ人数:2人〜3人(外注グラフィッカー含む)
開発期間:1ヶ月〜2ヶ月
運営費:月30万円〜100万円(人件費)
サーバー代:月3万円〜10万円
宣伝費:月0円(※ここが致命的)
売上:月5万〜100万円
概要:儲かるらしいのでソーシャルゲーム作りましたパターン。間違いなく失敗する。(201209追記)このクラスはもう絶滅したと思う。


中規模
初期開発費:300万円〜1000万円
スタッフ人数:2人〜5人(外注グラフィッカー含む)
開発期間:1ヶ月〜2ヶ月
運営費:月50万円〜100万円(人件費)
サーバー代:月3万円〜100万円
宣伝費:月10万円〜100万円
売上:月5万〜5000万円
概要:少しは真面目に作ったパターン。ほとんど失敗するが稀にヒット作が飛び出すこともあります。(201209追記)もうこのクラスも絶滅寸前。もうこのクラスからヒット作が生まれることはない。


大規模
初期開発費:1000万円〜8000万円
スタッフ人数:4人〜10人(外注グラフィッカー含む)
開発期間:3ヶ月〜4ヶ月
運営費:月100万円〜300万円(人件費)
サーバー代:月20万円〜300万円
宣伝費:月100万円〜3000万円
売上:月5万〜3億円
概要:ヒットを狙うならここがスタートライン。(201209追記)今はこのクラスが基本。ユーザーも目が肥えてきて安い作りのゲームには見向きもしない。



超大規模
概要:コンシューマーメーカーの大作、GREE、モバゲーの内製など。関わったことも内情を聞いたことも無いので一般に報道されている以上のことは知りません。



結局いくら必要なのか
最低ラインの予算。あくまでも最低ライン。
初期開発費 1000万円
3ヶ月分の運営費 300万円
2ヶ月分の宣伝費 400万円
合計 1800万円
真面目に狙うなら。
初期開発費 2000万円
3ヶ月分の運営費 500万円
2ヶ月分の宣伝費 1000万円(201209追記)今は宣伝費はもっと増やすべき。とにかく宣伝で負けてると勝負にならない。
合計 3500万円
ブーム当初のような安くて一攫千金はなくなったけど、他のコンテンツよりは遥かに分の良い賭けだと思うよ。
3ヶ月分の運営費?
不人気だったらそれくらいで撤退するということ。それまでの最低予算。
宣伝はローンチ1ヶ月あとから始めることが多いので2か月分。
当然ながら成功後も運営費と宣伝費はかかり続ける。むしろ増えていく。
運営費と宣伝費をまかなえているか(黒字か赤字か)は撤退の指標の1つ。
失敗した場合でもゲームを続けるのなら運営費はかかり続けるよ。
打ち切るのが難しければ運営を止めてサポート対応のみにすれば5万〜30万円(サポート代とサーバー代)くらいには抑えられる。
3ヶ月分の根拠は?
単純に、不人気だったらそれくらいで撤退することが多かったので。
撤退には、運営を全くしないでほったらかすケースと、ゲームを閉じて完全に終了するケースの2つがある。
ほったらかすといってもサポート対応はしなくてはならないのでそれが難しい場合は閉じてしまう。
有料課金していたゲームを閉じたりしたらユーザーから非難轟々じゃないか、と以前は言われていたが、少なくともソーシャルに限ってはそんなことはないというのが現在の常識。(怪盗ロワイヤルやドラゴンコレクション規模のものが閉じたらさすがにそれでは済まないかもしれないが)
最初の1月目は安定期で、ユーザーの反応を見ながらバグ調整と難易度調整に終止する。2ヶ月目から広告を打ちはじめてアピールしていき、2〜3月目の状況をみて続行を決めることが多い。
予算を減らしたい
開発メーカーが以前に開発したカードゲームをそのまま流用する。大きな変更は一切加えない。
どうせカードゲームは基礎システムは同じ。カードのバリエーションや数値調整のほうが重要。
既に絵が存在する題材をソーシャルゲームにする。絵の分だけ安くなる。
なので原作モノがはやる。
ソーシャルゲームの場合、通常のゲーム化と違い原作ファンが意外なほど喜ばないし、やってくるユーザーも原作を知らないユーザーが多い。原作人気のアドバンテージは大して効果ないことは忘れてはならない。(大人気アニメが失敗する一方で、超マイナー漫画がそこそこの成功を収めていたりする。)
ヒットを諦める
大人の事情でソーシャルゲームを作りたいが別にヒットしなくてもいいというケースが意外にある。
出せればそれでいいというのなら相当に安く作れる(もちろんヒットしないし全く回収できない)
最近はその予算で乱発する開発会社が多いが、もう少し良く考えようよみんな。
ソーシャルゲームにやってくるのはゲームにはライトユーザーだがモバイルSNSにはヘビーなユーザーが多く、彼らはそのゲームの「盛り上がり感」を鋭い嗅覚でつかみ、盛り上がっていないゲームからはすぐに逃げていく。ライトユーザーと侮る無かれ。
女性の井戸端会議を想像するとわかりやすい。彼女たちはどうせくだらない話しかしないが、面白そうな話には食いついてもつまらなそうな話には食いつかない。ソーシャルゲームも大体そんな感じ。
予算を増やしたい(増やしてでもヒットの可能性を高めたい)
予算をかける優先度は「宣伝>運営>初期開発」。
初期開発費は3000万円以上はかけても大差ないと思う。それ以上は宣伝に回すべき。
増額するならカードバリエーションを揃えることに集中。
勿論アイマスソーシャルのように後々のキャラ展開まで考えて徹底的にこだわり抜く場合は別だが、現時点ではソーシャルゲームからメディアミックス展開に持ち込んで成功した例は1つもない。(アニメ化やドラマ化やラノベ化しているものはあるがいずれも赤字覚悟の宣伝目的)
サーバーは突然の増加に備えて常に余裕を持っておきたい。
初期なら月5〜20万円でまず問題ないと思う。
広告を投入するといきなり信じられないほど客が押し寄せる。広告の投入前には必ずサーバー負荷を調査すること。
「大金をかけて広告をうったら人が押し寄せてパンクしてその結果逆に客が減った」という悲劇はたくさんある。
広告を打つなと言ってはいない、むしろバンバン打つべきでそこは勘違いしないように。
運営は常時専念するスタッフをプログラマー1人グラフィッカー1人の最低2人。
「常時専任」は超大原則。ときどき「ほっとけばサーバーが勝手に稼いでくれる」と思い込んでいるクライアントがいるが、ソーシャルゲームネトゲもやったことないんだろう。おとといきやがれ。
ただし上記人数だと機能追加が困難でジリ貧。できれば運営&分析プログラマー1人、新規開発プログラマー1人、が欲しい。
宣伝はグリー内、あるいはモバゲー内の広告枠を買う。当たり前だがこれが最も効果が高い。
雑誌とかに載せるのはのちのちブランドイメージを高めるために行うことで、最初は不要。
ゲームがよほどテストされていない限り、公開直後からの宣伝はしないようが良い。まずはユーザー動向を掴むことに専念すること。



雑記


(201209追記)コンプガチャショック
とにかく対応に追われて面倒くさかった
プラットフォーマーがすぐにコンプガチャ廃止を決めたのは英断だった
メーカーごとに対応が異なる状況になるのが一番面倒くさくて困るので
1年以上前に作ったコンテンツにも対応しなきゃならなくなって非常に面倒だった。
売れてないゲームは単純にコンプガチャ廃止。売れてるゲームではコンプガチャ廃止してコンプ報酬もガチャに含める対応をとった
外部からそればかり聞かれる。今も聞かれる。当然ですが。
課金ガチャ規制と勘違いしている人が未だにいる
悪質なゲームはアップルがアプリを規制するって根も葉もない噂が流れてうざかった
売上は減ったゲームとそうでもないゲームがある
減ったものは2割近くダウンしたがほとんど変化のないゲームもあった
元々売上の大きいものほど売上低下が少なかった。売上の大きいものはゲームとしてもよくできているから客離れが少なかったのだろう。
本音を言えば課金ガチャが規制されなくて本当に良かった
課金ガチャが規制されたら完全におしまいになると思う。課金ガチャ規制に踏み込むって噂もあったので正直言えば安堵した
コンプガチャに変わる新しいガチャ
業界的にはそういうのはやめようという雰囲気が強い。
課金ガチャだけは絶対に守りたいというのが非常に強い。だから危ない橋は渡りたくない。それにコンプガチャを廃止しても利益は十分に出ている。


(201209追記)リアルマネートレードRMT)対策
グリー、モバゲーともに本腰を入れて対策を始めている
両社で内容は異なるが既にトレード機能にはRMT対策をするように通達が来ており各社で対策している
RMT対策の副作用として無課金プレイヤーが大量の低レアアイテムを出して課金プレイヤーの高レアアイテム1個と交換するのが難しくなる
ゲームによっては無課金プレイヤー離れにつながるかもしれない。結構困る。
対策の種類。グリーやモバゲーから指定された方法もある。
プレゼント機能は廃止。RMTの取引に真っ先に使われる機能だからね。
同レア度のアイテムのみ交換できる。ゴミアイテムと高レアアイテムの交換を防ぐ。
トレードチケットを発行してトレードの頻度を制限する。大量のアイテムを交換するRMTの対策。
ゲーム内マネーのトレード禁止。ゴールドのRMTを防ぐ。
トレード相手のニックネームがわからないようにする。誰とトレードしているかわからないのでRMTが実質不可能になる。トレードはアイテムを出品するバザー形式になる。
全アイテムにユニークIDをつけて追跡可能にする。これはサーバー負荷がかかるのでやりたくない。
今後RMTはものすごくやりにくくなる。トレードがかなり不便になるのでゲームの盛り上がりに水を差す不安はある。それでもこれ以上規制を食らう訳にはいかない。


(201209追記)スマートフォンアプリ化
最初からアプリとして開発されるゲームが増えている
スマートフォンユーザーが増加してガラケーを無視するのもアリになった
iPhoneがフラッシュ非対応(Androidも今後は非対応になる)の問題を避けられる
HTML5はまだまだ使えない子。遅いし面倒臭い。アプリなら速い。
アプリだとサーバーとの通信を減らせる。画像は全部ダウンロード済にできる。うまくやればサーバー代は激減する。
アプリのほうが目立つ。マーケットに並ぶ。宣伝もしやすい。スマホ情報サイトでも取り上げられやすい。
サーバー未経験のプログラマーにはむしろアプリのほうが作りやすい
ソーシャルゲームが嫌いなユーザーはウェブには来てくれないがアプリだと来てくれる。
ブラウザの互換性問題から逃げられる。特にAndroidはひどい。アプリにしたほうが互換性の問題が起きにくい。
アプリアイコンがホーム画面にあるほうがユーザーも起動してくれる。大半のユーザーはブックマークアイコンを作ったりしない。
3Dで演出をいれてやるだけでリッチ感が出る。3DはUnityでコスト激減。
海外ではアプリのほうがウケる。通信事情が日本より劣るので通信が減らせるアプリのほうが都合が良い。
ウェブでやれる内容でも宣伝目的や通信の負担を減らすためにアプリ化するのはかなり意味がある。特に通信低減にはものすごく有効でアプリ化して画面遷移をアプリで処理して画像も全部アプリに内蔵すると全てウェブで行う場合の10分の1以下に簡単に減らせる。サーバー代にコストを掛けることが難しい規模の小さなメーカーほどアプリ化に積極的。


(201209追記)イラストレーターのコスト増加
近年イラストレーターのコストが増加中
絵の綺麗さはかなり重要。人気イラストレーターには注文が殺到している。コストは上がり続けている。
イラストレーター側からすれば美味しい状況になりつつある。需要が増大しているので仕事を選べるイラストレーターも増えてきた。


(201209追記)海外進出
海外進出して成功したケースが登場(内容は同業者の又聞き)
ベースは日本と同じゲームシステム(合成カードゲーム)で問題はない
課金率は日本より低い。日本人は適当に課金している人が多いがあちらでは詳細に考えて効果の高いところにしか課金しない人が多い
どうにかして運営の裏をかいて課金せずにやろうみたいな人も多い。
プレイ時間は日本より1回あたりが長い。20分以上プレイしている。日本では1回5分程度が目安。日本よりもワンプレイが長めになるように調整する。
あちらでも移動時間にプレイするユーザーが多い
通信事情は改善しているのかユーザーが通信料を気にしている様子は感じられない
コミュティは日本より盛り上がる。ゲームとは関係ない雑談をしている人も多い。日本ではゲームに関係のある話しかしないユーザーがほとんど。
メディアでの宣伝は日本ほど効果がない。
アニメっぽい絵があっても日本人が思っているほどには嫌われない。でも人気はリアル絵カード。
カードの性能しか見ていないユーザーが多いのもある
対人戦を好む。チーム戦は嫌う。


ここ1年ほどでの開発費とサーバー代の大幅低下について(以前の半分以下まで低下)
合成カードゲームの大流行
同じシステムなのでカードの絵と文章を取り替えるだけで開発できる。
競合企業の増加による価格破壊
以前はゲームの開発経験のあるウェブ屋さんというのは限られた存在だった。
開発ノウハウの蓄積&普及
安価なクラウドサーバーサービスの増加
以前はAmazonが多かったが、近年の国内のソーシャルゲームをターゲットにしたサービスはコスパが高い。
サーバー負荷低減ノウハウの普及
システム系中心だったウェブ屋が初めてソーシャルゲームを開発すると、データ不整合の危険が高いキャッシュシステムは一切使わないので負荷がとても高い。
現在はキャッシュは常識。実は3分前のユーザー乙のデータと戦っているなんてユーザー丙は気がつかないことが知れ渡った。
大金をかけてコンシューマーチックな凄いゲームを作るパターンが壊滅した
凄いゲームはむしろ失敗することが知れ渡った。


スマートフォンについて(以降スマフォ)
既にユーザーの3割はスマフォ。無視はできない。(201209追記)もうゲームによっては半分近くスマホ
ガラケー版を先に開発。成功したらスマフォに移植する。
ガラケー版があるゲームのスマフォ版にスマフォ版独自要素を組み込むことは規約で禁止されている。スマフォの特性を生かしたゲームがほとんどない理由。
ガラケー版から移植するときにやること
画像の高解像度化
デザインのCSS
押しにくいリンクを押しやすく
チート対策の強化(ガラケーと違い無線LAN経由ならパケットキャプチャされ放題)
怪盗ロワイヤル自動ウインクツールの仕組みを調べて永遠のイタチごっこが始まったことを理解
iPhoneが憎い
FlashLiteからHTML5へ書き換え。とても面倒くさい。
アプリ化は諸刃の刃
売上の3割をアップルに取られる。
アップル審査が怖くて無茶ができなくなる。
大規模アップデートをする場合審査待ちになる。
皆さんもブラウザ経由で遊んでね。アプリで遊ぼうにも最近はアプリ化しないけど。
Androidが憎い
メーカーによってブラウザの動作が微妙に違う
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端末の種類大杉
アキバで投げ売りしている中国製の端末とか知ったことじゃないよ
レイアウトが狂ってるのはあなたの端末が安物で解像度が低いからです
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チートアプリがマーケットに並んでるのを見ると不安になる

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